2025/11/14 18:32

幼いころ早く30代になりたかった。

30代といえば世間一般にいう働き盛りなお年頃だ。
そして、子どものころの私は30代になれば自然とバリキャリになれると信じて疑わなかったし、なりたいと思っていたのである。

友人にこの事を話すと「のりちゃんがバリキャリ?」と不思議そうな目で見つめてくる。

それくらい私とバリキャリは相反するものなのだ。

大人になればなるほど、生(せい)を全うすればするほど、バリキャリとは異なる自分がいる。

私の理想の30代はこうだ。
スラリと伸びた手足。颯爽と風を切る姿はえびちゃんや押切もえちゃんのよう。
片手にノートパソコン、もう片方の手にはプレゼンで使う資料を抱えている。

ミーティングに合わせて慎重した勝負ハイヒールを履き、部下を従えた私はミーティング室の扉を開けるのだ。

そこには取引会社の重鎮たちがいて、私を怖いくらいに見つめている。
このプレゼンに成功すれば会社には何千万円の利益が入ってくる。

さぁ、プレゼンを成功させてやる!と意気込んでいるのが、幼いころに思い描いていた30代の自分だ。

しかし、現実は違う。
スラリと伸びた手足はおろか、ここ何年も医者から「痩せろ」と言われている。

ヒールは体重の重みのせいで、履けばかかとが痛くなり履けずにいる。
片手にノートパソコンを持つ姿は、叶えられているがプレゼンのためではない。
これはユーチューブや話題のドラマを見るためのものだ。

もちろん本の注文をする時にも使用しているが、明らかに動画鑑賞の使用時間の方が長い。

そして、バリキャリといえば高収入なイメージがある。
一生懸命に仕事を頑張った私は40代か50代でご褒美として億ションとか買っちゃうのだ。

しかし、現実は億ションどころではない。
マンションではなくアパートだし(決してアパート暮らしをバカにしているつもりはない)、
コンシェルジュはおろか防犯対策も手薄と言えるだろう。
その上、アパート敷地内の草はボウボウなのと、不法投棄をするものがいるため全体的に小汚い雰囲気が漂っている。

おおよそバリキャリには不似合いな物件である。

とか何とか言って店主は自営業だし、少しは収入もあるんでしょ?と思う方もいると思う。

一応、自営業という肩書はあるものの、これもアルバイトがあるからやっていけてるのだ(現実はやっていけないのよ)。
今日はお客様があまり来なく、閑古鳥が鳴きすぎて喉を傷めるほどである。

そのため、病院やアンケートなどでよく見る職業の欄にはいつもアルバイトの項目に大きく丸印をつけている。
鯛文庫は暖かいお客様と某書店のバイトによって支えられているお店なのだ。

ここまで書いて自分がバリキャリとは無縁の生き物だと改めて感じている。

今からでも一発バリキャリ逆転は起こらないだろうか。

しかし、バリキャリになるには、超えるべき山が多すぎるため運よくなったとしても、きっと80歳は優に超えているだろう。

いくら人生100年時代とはいえ、80歳の自分には少し休んでもらいたいものだ。

そのため、私は今世のバリキャリをあきらめた。
バリキャリは来世でなろう。

それを友人に言うと、すかさず友は
「生まれ変わって人間になれればいいけど、ナメクジになるかもしれないよ」と
言ってきた。

んじゃナメクジ界のバリキャリを目指そう。
ナメクジ界にバリキャリがあるかはわからないが・・・。